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コラム


栗本オピニオンレーダー・エッセイ

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経済(株価)と自自公 小渕政権と総選挙の新展望
アメリカ1万ドル、日本2万円の株価の意味 ── 政治にどう響くか
 東証平均株価が1万9000円台をつけてから久しい。なかなか2万円の壁に届かないし、届きそうでで届かないというのはかえって気分的に苦しいものではあるが、それでも不況のドン底が叫ばれていたころ、株価が1万3000円ほどでまったく上へ動かなかったのがつい先ごろだということであれば、夢のような水準である。一方で、1ドル100円もあるかと危険視されていた円高も、なんとか110円くらいで推移しそうであって、輸出関連企業は少々ながらホット胸をなでている状況になった。

 一方で、世界経済を見ると、史上最高水準をどんどん更新してきていたアメリカ証券市場はようやくそのかげりが見え始めた。この2月末には、とうとう1万ドルの大台を割って、ダウ平均が9000ドル台に下がったのである。去年の秋までは、アメリカの景気が風邪を引き始めたら、日本は肺炎になるよという警告が幅を利かせていた。そのころ、私は、そのことについては「中間派」であって、アメリカの株価下落が起きるのは「織り込み済み」であって、政府主導だと見える範囲だったら、日本に影響を持ち込むことはないとみていた。

 アメリカの株価上昇は、どこかで調整すべきだというのは、世界中のエコノミストのコンセンサスに近かったからそこは問題がないのだ。そして、今回の株下落は、明らかにアメリカ政府がグリーンスパンを旗頭に公定歩合の引き上げをやった結果だ。それも、どうだこれではどうだ、という姿勢が顕わで、政府が株は下げるぞという姿勢をはっきりさせていたところに特徴がある。おそらく、9000ドルくらいまでは下げさせるだろうというのが大方の見方であって、そういう見通しの中での政策的な下方誘導なのだから、アメリカの株が下がっても、他国に影響の少ないものだったと言える。また、ダウではなくなすダックのほうは逆に買いが多数入っているから、必ずしも全面的な調整が始まったとも言えない。また、ナスダックのハイテク株は平気で、ダウは古いタイプの会社株だから駄目だというのも平板に過ぎる見方だ。要するに、資金量がもうアップアップなのだ。ハイテクもくそもなくなる日が来る。3月12日、日本の昨年10―12月期の成長率が年率換算でマイナス5.5パーセントで発表された。これで小渕はアメリカの不興を買ったし、ナスダックも簡単に下落してしまった。ハイテクもクソもあるものか。

 ところが問題は日本の株価である。アメリカ市場での株価下げが日本に風邪を引かせるどころか、全く関係なく推移した。下落は、これまたカラスの買って、嫌にほんの勝手だっただけだ。このところの株の動向で、アメリカと日本の株価の動向が連動しなかった(日本からアメリカへの動きはあった)のは、今回くらいのもので、この意味はよく見ておかねばならない。 アメリカの株価がアンバランスに崩れたとしても…
 つまり、クリントン・ゴア政権の手の内における限りの株価の動向なら、日本は大丈夫なのである。そして、それどころか、「アメリカではしっかり稼いだ。次は国民の気分が不安定なだけリスクもうまみもある日本市場だ」と考えるのが、国際投機資本であることはマチガイない。よって株式投機の金はヨーロッパには、行かない。ヨーロッパ証券市場は、ヨーロッパ経済が堅調なだけ安定しているが、各国それぞれに深刻な社会問題は抱えているし、失業率も高い。ドイツあたりでも平気で10パーセントの失業率を抱えている。政治家、エコノミストは、日本に比べて相対的に有能で、歴史に対する責任意識もはるかに高いものがある。ちなみに、中心的政治家のほとんどは、年令が高くても50歳代という私の年代で、しばしば60年代の反体制運動家やスペインならば反独裁運動の経験者である。旧共産圏ならば、反スターリニスト運動家だった人が多い。

 したがって、日本で歴史観も責任感も何もなく、ただ目先の利害に素直だ(従順だ)という一辺倒の保守政治家たちや官僚の社会運営とは違った、芯の太さをヨーロッパ諸国の政治には感じる。だから、21世紀はやはりヨーロッパの世紀になるだろうと思わせる要素が多々あるものだが、短期的にはアメリカの次には日本の市場で金を稼ごうとするのが国際投機資本の動向だといって間違いない。そもそも、昨年夏から、ヨーロッパでの論調は、このままではヨーロッパは(短期的にだが)に日本に再び抜かれるぞという警告になっていた。

 だからである。もしもアメリカの株価が、アンバランスに崩れたとしても、国際的に流動している資金が向かう先は日本が主軸である。とすると、日本の株価は下がらないという予測が生まれることになる。既に、このところの外国資金の日本株式市場に対する動きは、「買い越し」だ。

プラス要因もマイナス要因もあり──2万円、三日間の勝負!
  「株価は、もうあとちょっとで2万円。円高は、うまいこと処理されて適当なレベルに是正されそうだ」・・これが日本経済の現状。

 ということになると、もう日本経済は絶対大丈夫だという話しになりそうではないか。
 一日200兆円も動いているのが、世界の株式市場での利食いのための資金だ。この十分の一の20兆円が日本に投入されるようなことがあるとで、日本の平均株価が1000円上がる。もし、いまここで平均株価1000円分の資金が日本で実際に「買い」に出動したらどうなるのだろう。平均株価は2万円をしっかり越しすだろう。

  一日の終値で2万円を越した日がもし出るとすると、総理は歓迎の意と、まだまだです、油断できないという意のコメントをするだろう。そして、翌日の利食いのための売りを警戒する。そして、ほとんどの場合、翌日は下げるのだ。

  しかしである。それがもし、その翌日も2万円以上で終値をつけ、その翌日もそうだったらどうなるのか。それは三日連続の2万円である。三月三日、ひな祭りの日、日本の株価はぎりぎりに2万円を切って終了した。小渕は、この三日、堺屋経済企画庁長官に、景気は回復したかも宣言のようなことを出させて様子を見たが、市場は微妙な終わり方だった。 

  もしも、三日も続けて平均株価2万円を越すとなると、そこで浮かれやすい日本人は必ず浮かれる。個人投資家の買いが強く入ってくるはずだ。実は、現時点でも個人は基本的には「買い」の気分になりたくてしようがない様子がなくもない。それが、そんな甘い話はないよ、と止められている模様である。また、「買い頃」のマンションや投資信託などの動きは悪くない。

  かくて、日本では三日続くものは一週間続。一週間続いたら、小渕は、「解散」を口にし始めるのである。マスコミも紙数増の関係で解散をさせたくて仕方ないから解散歓迎共同戦線を組むことになるだろう。

  世界的に見たら、簡単なゲーム戦略だ。三日間、日本市場に20兆円置いておければ、日本人どもはわあわあ、解散だ、総選挙だとはしり出すのであるから、こんな面白い見ものはなかろう―ーで、この遊びはもう終わった。解散は、ひょっとしたら、『ない』。

  いずれにしても、株価2万円が三日続いたらわれわれも五月解散、六月選挙だと覚悟を決める必要があった。──実は、ここでこの間、初めて私は、秋以前の総選挙の可能性に言及した。そのくらい要注意!なのである。

しかしそう簡単にいくものか――やはりいかなかった。
  三日続くかどうかは、実は大きな大きな勝負だ。なぜなら、アメリカから他動的に資金が流入するのでなければ、日本の経済実態自体にはマイナス要因があるからだ。
  1. まず、失業率が少しも下がらない。ヤバイ。
  2. 昨年第三四半期(10〜12月)のデータが、多分、マイナス成長率で発表される――これはマイナス1.4パーセントで発表03/13。年率換算で、.マイナス5.5パーセントである。これで、小渕の公約、年間プラス成長は、完全に不可能になった。

激しくヤバイ。小渕派はこれをプラスにごまかして出せなんて言っているようだが、いくら弱小官庁の経済企画庁といえども、そんな鉛筆のなめ方はできない。
 大体、今はコンピュータだから、なめると壊れる。二期連続は非常にヤバイ。外国から、日本は公約違反ではないかと迫られることになったのである。小渕の盟友、アメリカも表面、文句を言わねばなるまい。

  ヨーロッパは、このところ、日本に短期的ライバル意識を強化しているから、当然、強く非難してくる。7月のサミットも近づいてくる。アメリカでは、小渕派と自自公連立の後押し役のクリントン・ゴア政権が次期大統領選で苦戦している。日本に陰からてこ入れしてやるどころか、逆に共和党のスキャンダルでも日本から出せないのかと言ってくるくらいになっている。ところが、日本を食い物にしようと進出している国際金融資本は、表面はワスプだが、資金融通はユダヤ系であり、これらは基本的にゴアの背後に着いている。

  好況のアメリカでも、ビル・ゲイツやら金融資本の連中は民衆に人気がないから、今回のゴアは苦戦である。ビル・ゲイツは、両方にソフトマネーを出して身の安全を図ってるけど、どっちにしろ不評で裁判は駄目さ。ところで、大統領選は普通なら、(つまり、あれほど偏差値が低くなかったら)ブッシュが完勝するのが今回の予定だった。いま、ゴアのバックの連中は、まずブッシュに対してマケインをかませ犬として優勢にするという作戦を立てた。ブッシュの勢いをまず止めようというものである。そしたら、このマケインが民主党の票まで食って優勢になりかけてきた。そこで、今度はマスコミを通じてマケイン批判をして、ブッシュにまた裏支援をかけるという面倒くさいことをやっているわけだ。つまり、マケインはブッシュ止め用で、かつ、ゴアに負ける用の「負け員」であることが例の連中には求められているってことで、こいつらのやり方はしつこくて嫌いだねえ――みんなここらは一歩引いてマクロにモノを見よう。

  そこでクリントン・ゴア・国際金融資本プラス通信利権資本の連中は、7月の沖縄サミットをなんとか大統領選の切り札の一つにしようと考えている。これは具体的な金とかいうものではないだろう。「権威」であリ、「イメージ」である。アメリカは小渕政権をしっかり子分として世界に紹介したがっているわけだ。

  小渕としては、ここでどじを踏むわけには行かない。解散しなければぜったいに総理のままでいるのに決まっているのに危険を押して解散するものか、というのがこれまでの私の見解だった。それは、基本的にはいまでも正しい。ここまでに、自民党は本気で解散を検討した事はなかった。──あったといっているのは知ったかぶりに過ぎないので、いい奴かも知れないが、選挙には知ったかぶりが泥ボーの次に邪魔だという原則が当てはめられんように注意しよう。なお、この原則は選挙のプロ中のプロが明らかにしている原則中の原則の一つだ。「選挙事務所の中心にゴミプロを入れるな」というものである。‥選挙に少し、経験のある諸君、他人にアドバイスするときには、あれが違反だ、これが違反だと脅してやるのではなくて、「こうしたらよくてこうなるよ」といわなくてはいかんと知っておこう。

  以上はすこし余談。

  2万円維持の難点を1、2と述べたが、まだもう一つある。もしも4月の声が聞かれる事になってしまうと、懸案の介護保険が始まる。始まるという事は、サービスだけでなく、費用の徴収も始まる。すると、前から分かっていたのに、人は金をとられると怒る。改めて、怒るものだ。これは、制度を作ったときの責任者、管だ、小泉だという結構、格好付け屋の政治家に大きな責任があることなのだが、国民の怒りは現行の権力者に向かうものなのだ。自民党がいかん、自自公がいかんと言う話になりかねない。 人々の財布の紐はしまり、株価も外国からの買い越し頼りだけで2万の大台が維持できるようにはならないのだ。

  つまり、株価2万円以上を維持するのは、かくのごとく大変な作業なのだ。不可能とはいえない。きわめて大変である。でも、それが何とかできたら、われわれも早く出番となる。6月選挙だ。私のリハビリも急ぎだ、急げーーということだったが・・・。。

サミット前選挙があった場合の意味 ── やはり、分裂ありだったか?
  サミット前の選挙をすることは、小渕にとっては党内基盤を固めるという点で魅力がある話しだ。小渕にとっては、次の選挙で勝つだけでなく、加藤紘一の芽をつぶしておかねばならない。その点で怖いのは、サミットをよれよれで通過したところで、「はい、ご苦労さん」の花道論が出ることだ。

 花道論が出ると、枠だけ通して、これから中身を入れて大儲けという盗聴法から始まる通信利権にありつけなくなるかもしれない。それは冗談じゃない。小渕は、それをバックに今後もキングメーカーであり続けたいのである。そういう点から言えば、サミット花道論封じの意味を持つ6月選挙は、「できる条件が整えば」やりたいに違いない。また、危険でも賭けをしてみる価値を感じることに違いないのである。

  こういうことを背景に、自民党内に発足した32人(から35人に増えたんだと)の国会議員による「政教分離を貫く会」に小渕たちが神経を尖らせること、尖らせること、まことに異常であった。これも、白川勝彦が中心エンジンなのだが、元郵政相の自見庄三郎を代表に据えて、メンバー秘密で二月半ばに発足した。自見は、名前は地味だが、自民党ではもはや有力な中堅幹部である。それに対して、党内から野中広務(またも)、党外からはなんと公明党最高幹部の神崎が、自民党を出て行ってから言えとか、公認を考え直すぞとかの恫喝をかけた。「ひょっとしたら、そのほうが選挙に有利なのかな。それなら、こんな自民に未練はないさ」とは、参加メンバーの述懐である。公明党とそこにべったりの小渕派議員は、どこで青くなるのか分かったものではないのである。それに、病床の竹下が死んだら、政変だぞ。要注意!ったって、竹やんの病気なんか誰がどこで注意すりゃいいんかねえ。

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