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ビンラディンを裁判に、のお粗末な「戦争」

栗本オピニオンレーダー・エッセイ

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 9月11日、アメリカを、強烈なアタックが襲った。

 2ヶ月たった今、アフガンで「戦争」が続いている。いろいろな報道がされている。でも、日本ではブッシュ支持一色の報道だ。ヨーロッパではそんなことはないぞ。

 第1、根本的なことがある。今回の米英による攻撃の根拠はいまだ公式には示されていないことだ。アメリカは他国を攻撃してはいるが、9月のテロの真犯人がビンラディンだと公には示せていないのだ。つまり、証拠を出せていない。証拠なしに他国に攻め込んでいるのだ。このことを誰もが無視するなんて、なんちゅうことだ。そりゃ、ビンラディンかも知れない。知れない。でも、そういう「疑い」でもアメリカの裁判では、無罪になるもんだ。だから、ビンラディンを本当に裁判かける気なんかアメリカにはありゃしないのである。―――当たり前ながらこのことを指摘しておいて事件発生直後の一文をここに残しておこう。

 

その前に新情報の補追をしておく。マ、大した事はないがね。でも、ひょっとすると大したことかも。といった程度ながらの大したこと。

  

今回の「戦争」とその原因についての日本での論調(マスコミ)は、完全に米英の主張についての前のめりの支持とプロパガンダのお手伝いになっている。一方、ヨーロッパでは、既に10月には「反戦」デモが各地(イギリスを勿論含む)で行われているし、日本および小泉政権のこの「前のめり」ぶりは異常なものに映る。

大体、このコラムにかなり前に書いたように、知性ある人間が「ビンラディンを裁判に」というブッシュの主張が公式の主張として超空虚な嘘であることが分からなければいけない。――ただし、私は第三者犯人説というような単純なことを言っているわけではない。もう少し歴史を良く読めと言っているだけだ。

しかし、先々週、偶然テレビで不思議な番組を見た。全くの偶然だったのでエアチェックもしていなかったし、正確な時間も記録していないがまことに不思議な見逃すことの出来ない内容の特集物だった。11月7日の水曜日、私は所用があって研究室から自宅付近に出て来た。ちょうど昼飯時になった。近くの商店街でランチを取っても良いが、最近、商店街もさびれてなかなか良い店が少なくなったし、駐車も面倒だった。結局、私は自宅に車を入れ、突然になってすまんなと言いつつ、自宅で妻が臨時に作ってくれた麺類の昼食を取ることにしたわけだ。

時間は正確に覚えていない。12時半から1時くらいのものだろう。で、ひょっこりつけた衛星放送の(多分)BBC(英国放送)が番組を流していた。こんな程度の偶然の視聴者だから、目くじら立てて騒ぐ気は無い。ただ、中身は以下のものだった。ま、軽く効いてくださいよ。

――ブッシュ大統領は父の元CIA長官にして元米大統領の親ブッシュ以来、ビンラディン一族と特別のチャンネルを持つ仲だった。それは今も切れていないのではないか。でなければ、例のテロ後、ちょっとした疑惑があればすぐ当局に引っ張るというやりかたで1000人以上のイスラム教徒を拘引している米当局なのに、なぜ10数人ものビンラディンの親族に特別機を仕立てさせて出国させたのか説明してほしいという内容だったのだ。記者は、治安当局に説明を求め、拒否されるところも報じていた。また、ビンラディンとアメリカ現政権との特別な背後関係を主張するジャーナリストも出演していた。私は、忙しかったので「ア、そりゃそうだわな」という程度の乗りでそのまま見過ごして大学に向かった。

だが、その後、ちょっと友人に話したら、そういつが妙にムキになったから、なるほどなということでここに記しておくだけである。意味の分からない人には、本当はなにも言ってやりたくはないんだが、あえて親切に書くと、

  1. この番組は大国の「権威ある」局の「権威ありそうな」特集として放送された。決して暴露物、赤新聞風の乗りではなかった。
  2. 本当かどうかは私には分からない。本当でありうる構造があることは分かる。
  3. こんなことが米英で報じられているということは、米英内部には様ざまな角度からの集材や報道があるということだ。日本はなにもそういうことがないんだな、アホが・・。

ということである。私の言ってきていることがアジだなどとアホなことを言う人はただのファシストである。世界の見えない人である。BBCあたりでそんな番組を作っているということは、世界はもっと複雑な背景があるものとこの「戦争」を考えているということなのである。

 (以下、事件後すぐに書いたオリジナル)―――

 ―――ニューヨークの世界貿易センタービルが民間機の自殺攻撃で炎上、二棟とも崩壊した。 また、首都ワシントンでは、米軍事力の中枢、国防総省も同じ攻撃を受けた。日本の株価は心配されていた1万円を割り込んだ。

 テロの犯人探しはすぐに始まって、アフガニスタンに潜むゲリラのリーダー、オサナ・ビンラディンの名前がさっと浮上した。対米攻撃を明らかに標榜していたという点で、ビンラディンの名前が浮かぶのは当然だ

 だが、一方で、このテロの規模が分かった時点で、早くもこれはラディンの仕業ではないという観測も出ていたことも言っておかねばならない。理由は

  1. 規模と組織性がアフガンゲリラのリーダーの域を越えている

  2. アメリカがあっさりやらせすぎているのではないか

の二つの疑問があったからである。

 6月くらいから、ビンラディンがアメリカ攻撃を予告していたのは事実だが、日本の外務省が真紀子外相に情報を上げなかったように、「いつものことだ」と思われていた。アメリカも、その虚を突かれたという見方もないわけではない。そうなら、規模とそれを可能にしたテロリストたちの命を賭けた決意がアメリカ政府の予測をはるかに上回っていたということになる。つまり、せいぜいハイジャックして、何か要求を突きつけるというくらいのことだろうとたかをくくっていたらガシャっとやられたということになる。

 でも、本当にそうだろうか。私は、アメリカの要求どおり盗聴法を押し進める自民党に反対して党を出た(考えてみたら、現外相の真紀子も公然と反対していた)が、それはアメリカが世界支配の新たなツールとしようとしているエシュロン(世界的盗聴システム)に日本が組み込まれようとする第一歩だったからである。このエシュロンは、この9月に入って欧州議会でも「アメリカ政府は相変わらず否定しているがやっているじゃないか。やめろ」という決議をしたくらいだ。だから、絶対に架空の存在ではない。諸外国はもとより本元のアメリカ国内のメールや電話は、当然、最もきちっと盗聴チェックされている。そんななかで、マークされていたはずのラディン系アラブ人たちがこれだけのテロを組織出来たのだろうか。これに大きな疑問符がつくのは当然だ。

 これに対してアメリカ国内では、「これは第二の真珠湾だ」の声が上がっている。

 真珠湾というのはアメリカ国民にとっては突然の奇襲だが政府にとっては予測して「待って」さえいた攻撃だったではないか。1945年の真珠湾では、前もって超重要な艦船(たとえば空母)は攻撃されないところに外されていた。そして不況に向かっていた米経済は国民の結束をも得て一気に戦争好況に向かっていった。戦争の結果は、アメリカのほぼ一人勝ちだったことは言うまでもない。

 今回のテロでも、おそらく60兆円くらいの損害をアメリカは受けた。60兆円とは、日本国予算の一般的経費(実質使える金)の1.5倍にあたる。また本当は60兆円より多いかもしれない。とんでもない金額ではある。これは、この第二真珠湾を予想していた政府の予測を超えているだろう。だが、ニューヨークのシンボルの崩壊、国防総省炎上という恥をかいたが、アメリカ経済の長期崩壊はありえない。生産基盤はそもそも全く壊れていない。

 まずコンピュータの時代だ。貿易センタービルの損害は、情報という点に絞れば意外にも早く復旧するだろう。その復旧は、一方でIT関係の新規需要を生む。それ以上にブッシュ政権は、国民の結束を背景に前政権下で蓄えられ、福祉にだけ使えと言われていた金を減税なり公共投資なりに使えるようになった。アメリカ国民は支持基盤が本来は弱かったブッシュ政権のもとに結集し、個人消費も強めて、景気上昇に向かっていく可能性がある。

 世界経済では、原油のほかに軍事関係の需要が急上昇する。武器、軍事的ITもアメリカの独壇場だ。

 したがって、短期はともかく、中長期的にはアメリカはこのテロの余波を享受出来る。また、アメリカの盟友小泉政権も余波で助かったところの一つだ。なぜなら、6月〜7月における小泉による掛け声だけの「サボリ」または 無策により、9月危機を迎えつつあった日本経済が株価1万円割れの格好の口実を得たからである。

 またさらに、国債30兆円以上発行と、銀行への公的資金再投入の口実も得た――やっぱりやろうとしているじゃないか米のIT産業が活性化すると、日本も好調に転ずる。これはアメリカ以上に同時多発テロ様さまだ。でもまさか、小泉政権が黒幕だなんてことはない。そんな力はない。ところが、どこかに「待ってましたぜ真珠湾」の黒幕勢力がいるんではないか。それが、テロ事件勃発後、最初に私のところに飛び込んできた外部情報だったのである。

 事件後一月たって、日本の株価も見事に事件前の水準に回復した。予想通りだ。ただ、事件がアメリカに与えた経済的影響は多分事前の予想(というものがあったとしたら)を大きく上回っていたことだろう。大体、貿易センタービル一帯の建築物が地下構造でつながっていて連続崩壊するなんてだれも予想し得なかった。つまり、それはテロリストの予想さえも越えていたはずだ。でも、アメリカブッシュ政権は予想通り、本来のブッシュの希望であって当然その方向へ舵を切り替えかけていたモンロー主義的自国主義をやめざるを得なくなり、世界戦略の構築を余儀なくさせられた。国際金融資本の思う壺である。

 一方で、相変わらずオサマ・ビンラディンが首謀者だという証拠はしめされない。だって、盗聴が主たる証拠だったら、外には公然と出せないのは当然だ。また、そういうことを田中真紀子に言うとすぐに外に向かってしゃべる。彼女は盗聴法に反対だったし・・。これも、この問題から外務大臣を外している理由である。

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