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参院選の真実の焦点!?

栗本オピニオンレーダー・エッセイ

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   「タレントで売れず比例に名を連ね」という川柳が朝日新聞に出ていた。うむ、なるほど、これはなかなかのヒット作だ。

 前議員も含め、聞けば名前を覚えているという連中が大動員されている。なにしろ「非拘束」方式の比例だというのでこうなる。個人の候補がどこの政党から出ようとも、その個人への投票がついでにその所属する政党への投票ともみなされるという奇妙キテレツな制度なのだ。だから、大橋巨泉などが登場する。本当は一番パワフルなのは、巨人の長島さんだとかテレビの女性アイドルなのだ。

 こういう状況の中で、どこの政党も有名人探しをしてきていた。その担当者がぼやいていたのは、「年収で出馬のイエスノーが分かれるみたいなんだ」ということだった。それによると、大体、年収(活動の総売上)で2億あったら、つまり月に2000万円程度の収入が入ってくる程度に売れていたら選挙に「出ない」。そして、10億もあったら「話しにも乗らない」、ということだ。長島さんやビートたけしクラスは話しにも乗らないわけだ。巨泉は、半分、引退していたわけで、余裕の登場かもしれないが・・。

 石原慎太郎も田中康夫も作家だったが、作家というのはそういう中では少し様子が違う。これは、

  1. 作家だけで食えている人は思ったより少ない(作家と称している人の三分の二は筆だけでは食っていない)こと、
  2. 作家はタレントに比べて仕事に自分の体を運ぶ必要が少ないから政治家と両立できること、
  3. 政治も小説のネタに使えるかもと思っていること、などから選挙に登場しやすい。

考えてみれば青島も野坂も作家だった。今回も宮崎学や高橋三千綱という有名どころが登場しているのもそのせいだ。

 巨泉だって、元は俳句作りという食えない典型の「文筆業者」だった。それが、テレビの司会業で売れて、悠悠自適の身分になっていたということだ。文筆業者は選挙に出やすいわけだ。

 え? 私? 私は、脳梗塞で倒れた人間だ。専門の文筆業者でもないし、一方、広い意味の復活に向けて、梗塞と戦っている脳梗塞患者の一員である。つまり梗塞のある身だ。よって、今回の「非拘束(非梗塞)」方式の選挙には登場しない。

 さて、この参議院選ではそういう個々人の当落も面白いが、焦点はやはり、小泉内閣―自民党―国民の関係がどう出るかだ。小泉は自保公の与党三党を合わせて参議院の改選過半数を取れば勝ちと言っている。それは間違いなくいけるだろう。けれども、三党でやっと過半数なら参院選後の官僚―橋本派の猛烈巻き返しがあることは目に見えている。では、猛烈に自民が勝ったら、小泉の「自民党内における勝ち」になるのか、そこが不明だ。これは、まだ選挙期間中までもつれ込んで議論が行なわれることになる。別の角度から言うと、参院選の真の焦点はどこのどういう結果で小泉の勝ち―鈴木宗男やその背後の野中の負けということになるのかという勝敗設定がいつどう出来るかという点になる。

 で、その一方、官僚たちは、選挙で忙しい政治家をよそに既得権確保の裏攻勢に命をかけている。7月は実は、普通8月末に出される予算の概算要求の最終裏交渉の時期だ。この概算がどの政権でもまったく骨組みが変わらず、結局は旧大蔵省の指揮どおりに動いてきたことは周知の事実だ。いや周知でもないか。だって、小泉政権の前の高人気内閣細川内閣が出来た1993年も7月の選挙だった。これは今回と違って衆議院選挙で、与野党がひっくり返るかも知れないと堂々と言われる選挙だったはずだが、官僚はまるでこれを無視して概算を決めていた。むしろ、どこが勝つか分からないから急いでやっておこうとしたのだった。

 今回も同じだ。小泉や竹中が上からいろいろ言っても各論ではね返せるよう準備している。総理や官邸の主導権重視なんて森でも橋本でも口だけは言っていた。実際にやろうというのなら、大きな予算には具体的に踏み込んで具体的な決定をしてしまわなければならない。一般論だけの竹中の発言もどんどん後退してきているようだ。

 参院選と言うよりも参院選期の焦点は本当はそこだ、そこ。どうせあまり結果の変わらない参院選はうっちゃっておいても道路特定財源の具体的ぶっ飛ばしなどの本当の戦いを小泉にはやって貰いたい。特殊法人のほうは、ある程度撃てているのだが・・。

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