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コラム

混迷きわまる自民党

栗本オピニオンレーダー・エッセイ
2001/03/29〜4/10

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裁選の日程が夏前というかたちで決まりながら、相変わらず自民党の動きが定まらない。

ひとつには、自民党を牛耳る野中―古賀ラインの態度が決め切れないことがあるからだ。実は、野中を総裁選に出すことは決まっているのだが、野中を候補に選挙をするにはいくつかの難しい条件がある。そのひとつは、短期決戦でなくてはならないということだ。野中が新たな総裁候補であり、要するに新たな日本の首相だということが世界に知られれば、その反響も改めて出てくる。「闇将軍」と言われた彼の経歴も改めて話題になる。

野中はある意味で勇気を持った男で、自分が被差別部落の出身だと公に発言した自民党でほぼ唯一の有力政治家だが、彼が日本の首相になるというなら、ではその他の誰がどうだといったくだらない噂も、ついでに選挙戦の闇をにぎわすことになるかもかもしれない。また彼は、きつい糖尿病の「病み将軍」でもある。また、老人である。大正生まれで四捨五入すればもう80歳だ。

一方で、世界が彼の政策や信念に関心を抱くことになろう。国民も改めてそういうことに関心を抱くことになる。

これが本当は彼らには一番怖い。野中たちが執念を燃やしてそのために働いてきた信念とは、「なにがなんでも自民党を権力政党の座に置いておく」ということでしかない。そのためには、時が必要とするなら、公明党はもちろんのこと、小沢一郎と手を組んでも良いし、ひょっとすれば共産党にでも平気で手を出し兼ねない。もともと共産党全盛だった京都蜷川府政時代にも生き抜いてきているから、チャンネルもある。これは徹底している姿勢だ。だが、政策ということになると、別に一貫したものがあるわけではない ─ と言うより、何もない。

だから、国民的イメージから言っても、参議院選挙用の看板には不向きである。だから、国民に対して彼らが大きなクエスチョンマークを投げかけてくる。時間的余裕を与えて総裁選を行ってはいけないのだ。

いま、必死になって総裁選登場の噂を消しているのはそういうわけだからで、本当は、本人もまわりもやる気である。作戦としては、自民党内の世論を「どうしてもお願いします」というところに持っていってから、短期決戦で総裁選に勝とうというものである。でも、これは彼らにとっての既定路線ではあっても、まだ議員たちにも認知されているものではない。

またもいうひとつ、彼らの作戦においては、議員たちよりも地方支部から先にてこ入れしようとしている。地方支部のほうが、議員たちよりも中央権力の目つきや動向に敏感だからだ。だから、総裁選での地方支部票は増やされようとしている。方針は一応、着々と立てられているわけだ。

だが、自民党は全体としては大混迷だ。森が駄目で変わるのだから、森派会長の小泉純一郎は自民党の論理から言って駄目に決まっているのだが、すっかり手を上げている気分である。大義名分?としては国民に人気があるというものだ。だが、地方支部には人気がないし、前回の総裁選で小泉派の中心だった尾身幸次などはいまや完全に野中派である。加藤紘一が小泉なら支持すると言ったわけだが、加藤は自民党内では完全な死に体でまったく影響力がない。

小泉が、もしもいまより有力になるようなことがあるなら、そして、野中が最後の最後に無理だということになれば、野中たちは亀井静香の線を出してくることになっている。亀井は、派の盟友、村上正邦とKSD事件の余波で静かにしているが、実は虎視眈々、森の後を狙っていたからこそ、敢えて森支持を旗印として掲げていたのである。

自民党では、総裁になるのには古くからジンクスがあって、それは前総裁を批判して馬を進めてきた者には勝ち目がないというものである。これは、別に信義がどうしたといったものではない。ただのジンクスである。だが、亀井はマジにこのジンクスを担いでいた節がある。KSD事件でいったんは野心も引込んだが、それでむしろ他の幹部に売りこんだということになっている。有力者亀井を大穴というのも変だが、自民党の混迷が亀井を大穴のような本命のような不思議な位置に置いたわけだ。

だから、結局のところ、おおいに混迷したあげく、次期総裁は本命野中、対抗亀井なのである。


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