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コラム

小泉新総理誕生
──だが自民の改革は頓挫?

栗本オピニオンレーダー・エッセイ
2001/04/10, 13追加

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  月第一週の自民党内の雰囲気は、「要するに橋本で決まり、後は何もなし」だった――もうかなり昔のことと思える。亀井の出馬も、実はもともとは今回は橋本を最後に支持して次を狙うというものだった。

その路線から言うと、総裁選が多少もつれても、橋本の当選は決まっていて動かないはずだったが、橋本の不人気は橋本派自体が驚愕するほどのもので亀井が橋本を支持し出すという筋書きも機を見るに敏の亀井によって覆された。

一気に流れが変わった
のは、ひとつには、アメリカの大統領選挙を真似て作ったところの地方予備選挙をやる方式が出来たことである。

地方の党員で選挙をやって、勝った候補がその県の三票を総どりする。これだと、その開票がムードを作る。小泉は、もともと一般党員に投票させれば前回の総裁選でも小渕に勝っていただろう。それが今度はなだれ現象を起こさせることになったのだ。これが橋本支持が多数であった国会議員の手足を縛った。これが小泉勝利の第一要因である。一般の人気に拍車をかけたのには田中真紀子の支持は大きなプラスとなった。

第二には、橋本の不人気はこの間の野中による恐怖政治的自民支配、そしてそこに始まる日本支配に対する不人気が基盤だったことに野中たちが気づいていなかったことである。野中は、一時期、本気で自分が総理になることを夢見た。野中に信服している者は橋本派にだって少ないし、青木、村岡を始めとして内心の批判派は多いのだった。

改革派を売りにして登場した小泉だが、彼はこの間一貫して改革の路線を守りつづけていたわけではない。彼は昨年10月の加藤の乱に際しても、きわめて冷たい態度を取っていた。小泉の属していた(と言うより彼がボスだった)森派は、元三塚派で、小沢が飛び出した旧竹下派ほど分裂が派手ではなかったが、加藤六月、武中正義、亀井静香らが分裂していった派閥だ。そこで誰もが異口同音に、小泉はつねに派閥の憲兵隊長だったと言う。出来た内閣も、女性、民間人、田中真紀子というところから敢えて目をそらす(それは本当は難しいが)と、完全に森派内閣であるという不満が出ている。                       前回の小渕に敗れた総裁選では、派閥の出馬合意を取り付けるべく二日間ほど態度決定を遅らせたため、勝機を逸してしまった。小泉ー梶山連合を作ればひょっとしたら小泉でなく梶山が総理になっていたかもしれないが,それで良かったのではないか。そして、梶山が死んだ後、それを支えた小泉で総理になるのであったなら、小泉内閣の意味はモット本物になったはずだった。

あの、前回の投票直前には梶山との合同路線を採るべきところを派閥の利害を気にして、おおいに渋ったことをいままことに残念に思い出す。そこで最後の機を逸することとなり、これも勝てなかった原因だった。その結果として、自民中心派をして公明との連立路線へと走らせることとなった。その梶山はいまは死に、前回、派閥の論理を超えて小泉を支持した白川と小泉の選挙戦で本気で体を張った私はともに自民党を去り、国会も去った。前回の小泉惨敗の結果に憮然とする私に彼は「少なくとも秋まで待て」と言った。「え? 秋まで?」と言う私に彼は、もう一度ただ「待て」と言った。実はそこでその繰り返しの言葉の中に「秋まで」が抜けていたことに私は一瞬、気づいていたのだった。

心配していた通り、その秋から小渕の政治が動き始め、日本はさらにまずい方向に動いて行った。もし小渕の脳梗塞が無かったら、今度の小泉内閣はなかっただろう。あのときの小泉の「意味の無い待ち」の罪は大きかったのである。いま小泉政権が誕生し、白川も私もまことに複雑中の複雑と言うべき気分である。小泉が内閣を作ることだけが目標であるなら、「待て』の意味は正しかったことになる。しかし、この間、彼の内閣も引きうけざるを得なかった自保公連立路線は確定してしまったのである。それをどう考えるのか、この時期のこういう政権の出来方で本当に改革が出来るのか、大体、自民党改革の意味が本当のところ分かっているのだろうかという微妙な疑問が湧かざるを得ないのである。「参院選の看板だけ」になるなよ、というのがかつての友人の正直な思いである。

繰り返すが、総理になるためということであれば、今回の「成功」を見れば「待って良かった」ということになる。

しかし、ここで小泉が自民総裁になることとかの細川が非自民政権を作って自民解体を不十分にしたまま「ガス抜き」の役割だけを歴史上果たしたこととを比較せざるを得ない。自民党が本当に変われば日本は変わる。だが、自民党は日本自体である。自民党が先に日本に先んじて自分で変わることは有り得ない。日本が変わるためには自民党とその基礎に存在する官僚支配は壊さざるを得ないのである。そういうことが小泉に出来るのだろうか。最高に出来ることは、レーニンの革命に先行した曖昧ケレンスキー政権の役割である。

そういう時期は、前から言っている通り、早くて次期衆院選である。今回の参院選前後ではない。小泉の政権が出来ても、自民を割るとか解体するとかの動きにならない限りは参院選用に「消費」されるだけだろう。自民党員における小泉の人気というものも、ようするに近づく選挙に橋本ではどうしようもない、もちろん野中でもっと駄目というものだったと理解すれば良い。前から言っている通り、小泉は、その自民党のありかたに対する姿勢の保守性により、参院専用の看板として消費される危険性が高い――そこが変われば、大きく動き出すのだが。亀井は、そのあたりをすべて承知だ。そして依然として断固として次を狙っている。今回は、影響力を売りこんで資金や兵を養っておけばよい、と考えていることは変わらないわけだ。

ただし、これで昨年の加藤の乱以降、党内の(と言っても要するに野中、古賀、橋本派の)陰湿ないじめの対象となり政治的に全く「潰されていた」加藤紘一の発言力が「普通」のところまで回復するという意味は有る。山拓もだ。山拓派からは入閣もありだ。ただ、小泉のバックに加藤がついて、という感じになれるかどうかが課題だろう。そうなったほうが自民党の延命に役立つということにすぎないが・・。だから、結局のところ、「新党・自由と希望」代表の白川勝彦の最近著『自民党を倒せば日本は良くなる』(アスキー)というのが唯一正解なのである。

前から言っているが、要するに次の衆院選前後が問題なのだ。ただし、白川氏はもっと前だと言っているね。するとやはり参院選?


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